母を思う
終戦記念日の8月15日は、カトリックでは、聖母マリア様がその人生の終わりに肉体と霊魂を伴って天国にあげられたという聖母の被昇天(せいぼのひしょうてん)の祝日です。
そして、私のカトリックの洗礼名は、被昇天の聖母の御名「マリア・アスンタ」です。
【マリアの被昇天はマリアが神の母であることに由来する。神は、御子をやどし、生命のつくり主を生んだマリアの身体に墓の腐敗を免れさせてくださった。マリアが神の母となったことが全世界にとって恵みであったように、マリアの被昇天は神へとのぼる全人類の被昇天のはじまりである。】(聖人略伝より)
「被昇天のマリア様」の洗礼名を戴いてカトリックの信徒となった時に、私がまず思ったことは、私をこの世に生み育てて下さった母のことでした。
「母の躾」と題して以前に記した文です。
母は早くこの世を去ることを感じていたのか、幼い私に厳しく躾をしてくれていたようでした。その躾とは、多分三歳位から始まる自己主張に対してと思います。
自分が悪かったという記憶は少ないのですが、いい子だったという記憶も私にはありません。一つ違いのやんちゃな兄との喧嘩は、日常茶飯事だったようです。兄には力では勝てないから、口喧嘩や言いつけ口をして、自己主張をしていたと思います。
しかし母がそれをどのようにあつかったかという記憶はないのですが、ただ、母が、「言いたいことがあったら、神様におっしゃい。神様におききなさい。」
「悪いと思っても人には謝りにくいこともあるでしょうから、神様に謝っていらっしゃい。」
「心の中に思いを残していると黴菌が広がっていっぱいになるから、直ぐに、神様にお話ししてしまいなさい。」という母のコトバが記憶にあります。
私は、その「直ぐに」に従って、近くの八幡様に行って、ご神前で何でもお話していた思い出があります。神様とお話しすること。これが、母の躾でした。
母の亡くなった後の私は、お月様に向かってお話をしていました。お月様が見えなければ、お星様にでした。そして、お月様もお星さまも見えなくても、夜の空は、私のおしゃべりを聞いてくれました。でも、大人になって話すことをしなくなると、自分とこの世の対決は、厳しい皮を剥ぐような痛みの日々でした。
今、私はおばあさんですが、母の躾の子供の時のように、何でもかんでも神様とお話をしています。お空の方は、あきれているかもしれませんが・・・
この歳になっても、母の遺産のような母の躾を思い出します。有難いです。
この文の後に、私の洗礼名の被昇天の聖母の御名「マリア・アスンタ」について記した文がありました。
【私が、マリア・アスンタという霊名を戴いて思ったことは「聖母マリアは、肉体のまま昇天された」ということでした。肉体を持つこの世の死を超えての、霊的な魂の昇天のみを考えていた私は、肉体のあるこの世を否まずに受け入れて、この世に起きた全てを受け入れるという「母の愛」を言われていたということ。それが、昇天の意味に繋がると気づかされました。】という文でした。続けての文です。
この世のエゴのうずまく巷を嫌悪して受け入れられずにいたエゴの私が、知らず知らずに、素直に、単純に、すべてに「ありがとう」と言えるようになってきたのは、「MELT」の真意に出あったからと思います。「MELT」(心が和らぐ)ことは(憐みの情が起きる)ということです。それが、エゴからの脱出でした。
自己にこだわる心のエゴは、絵の具の混色が濁色になるようなものでした。「エゴ」を悪として敵にするのではなく「エゴ」をもっているからこそ、光を通し美しい色として融和する(溶け合う)ということを、教えて戴いた33年だったと思いました。
生まれながらにある「我」というものが、単純な素直の「全てを受け入れる」という、調和に融和すると、それは光となって輝く「吾」になります。
なんでもない大自然の太陽の輝きは、地球の土、水、そしてそれに育まれた様々な生物、そして人間の心も照らし、全てを受け入れる素直な愛の心に代えます。
それは「母の愛」のお働きによってです。
その母なる方の御名は「マリア・アスンタ」。2005年8月8日(五十鈴記)
今から13年も前に記した文を、久しぶりに読みました。
そして、久し振りに母の事を思い出しました。
10歳の時に母の死に遭った私の母への思いは、今は、物語のお話しのようです。
そして、母のいない子が、母の胸に代わる何かを求めて彷徨った頃を思い出して、今、母に遭えたら・・・と思いましたが、母の寿命の年を倍も越えた老婆の私です。
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