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北里研究所メディカルセンター

稲本玲子

 大村先生はご自分の理想とする病院も建てられたのです。それは、美術館のような病院。そこでコンサートが聴ける病院。1989年に埼玉県に建設された北里研究所メディカルセンターです
 廊下をはじめホールにも、絵画が展示できる空間を。
 エントランスホールをコンサートホールに兼用できるよう、コーナーにグランドピアノを設置。
 北里研究所の設立者でペスト菌や破傷風抗体の発見をした北里柴三郎の唱えた予防医学を率先するため、地域住民に向けた健康維持の啓蒙的な講習会の催せるコミュニティルームを設置。

 なんという素敵な病院でしょう!
「私の人生の最後を、このような美術館のようにいろいろな絵が飾られた病院で過ごせることは、幸せこのうえもない。」と重症な脳腫瘍の患者さんが語られたそうです。
 毎日2000人を超える患者や付き添い、見舞いに訪れる人々が楽しんでおられるそうです。
 院内に特別なスペースを設け、地域の美術愛好家に解放されています。
 1600点の絵画の収集があり、時々展示替えをしておられるのには、度肝をぬかれました。

 コンサートは年2,3回開かれ、300人くらいの患者や地域の音楽愛好家などの聴衆が音の響きを楽しんでおられるそうです。
 講習会も年に数回企画され、専門医の話を聞けると云うことで、地域の人々に喜ばれているそうです。
 こんな病院が近くにあったらなーとおもわずにはいられませんでした。

 私の夫が病院長だった時、同じような理想で病院経営をしていました。公立病院なので、絵画を購入する予算があるわけではないので、絵を寄贈してくださる方を私に頼みました。京都の二科会の会員の先生方や、友人たちが喜んで寄贈してくださり、夫は大満足でした。私の絵も、夫が自由に病院に持っていっていました。
 クリスマスコンサートは毎年開き、芸大生だった娘が応援して楽しかったようです。
 時には、夫も下手なチェロをご披露して喝采を頂いていました。
 夫が生きていたら、大村先生のご本を読んでどんなにか喜んだでしょう・・・

 韮崎大村美術館を訪れて。大村先生の著書を2冊買い求めました。
 読ませていただいて、なんと素晴らしい方が日本にいらっしゃることと心の底から感銘いたしました。そして心が高揚し、清々しい気持ちに満たされました。子育てしているときにこの本に会いたかったと痛感しました。
 ノーベル賞の授賞式の帰りにノーベルのお墓まいりをされた大村先生。
 日本から菊の花を持参されたと本に書いてありました。
 メディアを通して、もっと全国に、大村先生の偉業と理想を広めてほしいと思いました。

 ノーベル賞を頂かれた先生方は、とっても遠い存在でしたが、大村先生は私のすぐ傍にいらっしゃるような親しみを覚えました。先生の絵画の造詣の深さには感服いたしました。
 出来ることならば、メディカルセンターをお訪ねして先生にお会いしたい!!です。
 そして、山梨が益々好きになりました。
 こんな素敵な美術館に連れて行ってくださった五十鈴さんご夫妻に心からお礼と感謝を申し上げます。




稲本玲子撮影







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