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韮崎大村美術館館長 ごあいさつ

稲本玲子

 大村美術館館長の書かれた文を読ませて戴き、この美術館に来させていただいたことを、心から嬉しく思いました。その大村美術館長の御挨拶の文です。

 これまで40年来、絵画や陶磁器などの美術品を蒐集し、日々鑑賞しながら楽しんでまいりましたが、その喜びを多くの人々と共に分かち合うことにして、2007年10月に開館しておりました美術館をこのたび韮崎市に寄贈させていただきました。
 優れた美術品と云うものは、本来個人だけで楽しむものでなく、人類全ての共有財産であるとおもうからです。

 私の敬愛する山本周五郎は「全ての芸術は人々をたのしませ、清くし、高めるために役立つものである」と、小説『鼓くらべ』の中で語っています。
 もし私の人生に美術品との出会いがなかったならば、それはさぞつまらないものになっていたでしょう。悩み苦しんでいるとき、あるいは精神が彷徨えるときなど、私はいつも美術品に触れることで、自分を見失わずにいられた気がします。そして、それらは常に私の心を和ませ、まるで深呼吸したあとのような晴れた気持にさせてくれます。

 このように当館収蔵作品は、私にとって一点一点がかけがえのない想い出深いものばかりであり、多くの作家たちとの巡り合いをとおして感銘した作家の生き様そのものが伝わってきます。
 縁あって(学)女子美術大学とこれまで長きにわたり関わりをもってまいりましたが、女流作家たちに特に深い思い入れを感じています。また、他にも鈴木信太郎をはじめとする戦後の日本画壇を代表する洋画家のコレクションや、近代以降の陶磁器コレクションなどにより変化に富んだ企画展を開催してまいりたいと思います。

 私はこれまで科学者として、海外での研究生活や旅を続けてまいりましたが、これらの機会は、同時に故郷の風景のすばらしさを再認識する日々だったようにおもいます。
 当館の展望カフェや、庭園からは、四季折々に変化する富士山の雄姿をはじめとして、八ヶ岳や茅ヶ岳さらに奥秩父連山を望むことができます。隣接する武田乃郷白山温泉ともどもお気軽に訪れて心身ともに豊かなひとときをお過ごしいただければ幸甚に存じます。

(武田乃郷白山温泉は、大村先生が故郷への恩返しにと、温泉の発掘を発起され、故郷の人々、一般の人々が入浴を楽しんでいる。)
 韮崎大村美術館はこんなに温かい素敵な美術館でした。







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