ori02

Page :: ori02 / 12


 あとがき


織田廣喜先生・思い出の文

 ご主人の介護に明け暮れる日々。そして、二科展に出す絵の制作。稲本玲子さんは、とても、文を書くお時間はないと思い、メールで送られてきた絵でと、「折々の記」第2巻を編集し終えたところに、稲本さんからの「織田廣喜先生とリラ夫人」と題した文が、メールで届きました。「おわりに」と、結んだ後でしたので、最後に「あとがき」と題して付記します。




織田廣喜先生とリラ夫人

稲本玲子

 たなばたさまの季節が来ると、大和郡山の実家で織田先生をお迎えして、五十鈴さんや、小さなうつわの会のみなさまと過ごした夢のような、宝石のようなあの宵を思い、感慨ひとしおです。織田先生も心に残る宵だったようで、この年の二科展に300号の素晴らしい大作『天の川』を発表されました。私は二科展の初日に『天の川』を拝見した瞬間、あの宵!を絵描かれていると思い、織田廣喜先生のところに走って行って、思わず先生と手を取り合いながら、「この絵を誰にも売らないでください! 私が買いにきます。」と言ってしまいました。
 後に、この絵『天の川』は、私にと言われて、下さいました。

 限りなく素晴らしい想い出のある織田廣喜先生。沢山の想い出の中から、織田先生と奥様のリラさんとの想い出をお届けいたしましょう。と云いますのは、私も先生と同じように、介護度4の夫の介護をしています。織田先生がリラさんになさっていたことが、とても私の介護をする参考と力になっているのです。
 一番重要な事は、先生がリラさんを心から愛していらっしゃり、リラさんを大切にされて本当に慈しんで、介護をされていらっしゃったことです。このことは、介護をするキー・ポイントなのです。愛情と共に介護をしていると、神さまが力をくださいます。私もこの経験をさせていただいています。
 介護をすることは、大変なことです。でも、おかげさまで、とても元気で病気もせず、お力を頂いていると実感しています。

 私が初めて織田先生とお会いしたのは、京都での先生の個展の会場でした。その日はお節分で、吉田神社と壬生寺へ(京都で、節分会で有名)お参りに行った帰りでした。個展会場で先生の素敵な絵を拝見して感激していると、画廊の方が、「先生は京都駅に着かれたとのお電話がありましたのであと10分ほどでここへ来られますのでお待ちになられたら・・・」と言ってくださいました。
 憧れの織田廣喜先生にお会いできる!!先生は車椅子を押して会場にさっそうと登場されました。車椅子には毛皮のコートを着て毛布にくるまった女性が乗っていらっしゃいました。
 思わず「お母様ですか?」「いや、家内です。」「えーっ?お母様でいらっしゃいますね。」笑いながら「家内です。」こんな問答をするほど、先生はお若くはつらつとされていらっしゃいました。それに反して奥様は重いご病気なので年齢不詳でした。

 私が二科展に出品していることをお話すると織田先生は喜んでくださいました。
 それで、何故二科展に出品するようになったかをお話すると、織田先生は私の手をとって大喜びをしてくださいました。それは・・・私が当時絵を習っていた今は亡くなられましたが、泉地靖雄先生が、公募展の出品を勧めてくださいましたが、私は沢山の公募展のどこが良いかさっぱり解りませんでした。泉地先生は、「公募展を見て回り、一番気に入った所へ出しなさい。」とアドバイスをして下さいましたので、1年かけて、公募展を見てまわりました。

 ある日二科展の会場に入ると、1枚の絵の前で私は、釘付けになりました。
『電車』と云う題の300号の絵でした。とびきり上手な絵ではないのに、見ていると不思議な感動が沸き上がってきました。この不思議な感情は何なのだろう・・・。
 この絵を描かれたのが織田廣喜先生だったのです。



電車

 泉地先生にご報告すると「あの絵がわかりますか? あなたは目が高いね。」と褒めて下さいました。勿論、こんな素敵な絵を描かれる織田先生のいらっしゃる二科展に出品しようと決めました。それから35年間、私は二科展に出し続けています。
 個展の会場では、先生とのとびきり楽しい時間でした。
 お別れする時、絵を教えて下さいとお願いしたのでした。

 それから先生との素敵なお付き合いが始まったのです。
 祖師谷の御宅には何度も寄せていただきました。
「家内の世話が済んだ頃、2時ごろにいらっしゃい。」伺うと、お風呂あがりで、先生にマッサージをして頂かれて、つやつやのリラさんが気持ちよさそうにしていらっしゃいました。
 先生のアトリエはリラさんの病室でした。いつでもリラさんの状態が把握できる距離に先生はいらっしゃいました。
「夜寝る時は、こうして手と手を紐で結んで、リラがベットから落ちないようにしていますよ。」と笑いながらおっしゃっていました。



待合室にて

 看護婦さん、お手伝いさんはいらっしゃいましたが、直接の奥様のお世話は、すべて先生がしていらっしゃいました。リラさんの病院通いの付き添いも先生のお仕事でした。
『待合室にて』を二科展で発表されました。病院の退屈な待合室も先生はパーティー会場のように描かれました。

 祖師谷の御宅に伺った時、急にリラさんが入院され、先生は病院のすぐ近くのホテルに泊まっておられるとのことで、そのホテルに行って先生にお会いしたこともありました。
「どこでん(どこでも)、いつでん(いつでも)リラと一緒です。パリでん、(パリでも)九州でん、(九州でも)どこでん(どこへでも)連れて行きますよ。」
 大阪での先生の個展の時、民族大移動のようにしてリラさんを連れて来られました。

 パーティーの時もリラさんとご一緒でした。先生は、内ポケットからハサミを取り出して、食べ物を小さく切って食べさせていらっしゃいました。いつもしていらっしゃるので、自然に上手に食べさせていらっしゃいました。
 私も、現在、夫に3度の食事を食べさせていますが、これが、なかなか難しいのです。
 沢山口に入れるとむせて食べられません。

 飲み物にも注意が必要です。こぼれないように、熱くないように、また、冷めたら、温めなおして、食べ物が喉を通過したのを確かめてから、次の食べ物を口に運びます。
 夕食に2時間はかかります、先生がしていらっしゃったように、はさみは役に立ちます。
 私は夫の介護をしながら、先生が奥様にしておられたこととオーバーラップします。
 夫にきつい言葉をかけてしまった時、優しい織田先生を思い出して、しまったと反省します。
 織田先生は絵だけではなく、介護でも私の先生でいらっしゃいます。
「ご主人をお大事にね。優しくしてあげるのですよ。」と先生の声が聞こえてくるようです。

 先生は17年間奥様に先生でないと出来ない手厚い介護をされました。
 リラさんのお葬式には、先生は達成感と安堵のご様子でした。
 することを成し遂げた勇者のようにお見受けしました。
 リラさんを送られてから、一度もリラさんのことは、話されませんでした。
 看護されている時はとてもお元気な先生でしたが、奥様を看取られて間もなく、大病をされました。
 先生の回顧展が伊豆の20世紀美術館で行われた時、招待してくださいました。
 お会いするなり『ヤバい』・・・とても弱っていらっしゃり、私は直感で危ないと感じましたので、「わたしの言うことを聞いてください。」と申し上げ、夫の親友の石村巽先生をご紹介しました。

 石村巽先生は慶応大学の医学部の教授でいらっしゃったので、どんな病気にも総合的に対応していただけると思ったからでした。
 私の判断が功を奏して、織田先生は命拾いをされました。石村巽先生はとてもよくして下さり、石村先生の存在はとてもありがたく、織田先生も心から感謝をされていました。
 2ヶ月ほど慶応病院に入院されて、回復をされました。私が命の恩人と大変喜んでくださいました。
 お元気になられてから先生は、私達のおさそいに答えて、とても楽しんで、何度か関西にいらっしゃいました。







【当サイト『小さなうつわのメッセージHP(山梨版)』のURLについて】
 2019年7月6日以降に、このサイト『小さなうつわのメッセージHP(山梨版)』へアクセスする際は以下のURLでお願いいたします。

≫ 当『小さなうつわのメッセージHP(山梨版)』のURL(https://awa.rgr.jp.wiki.cgi)(別窓で開きます)



【新サイトの開設にともなう当サイトの扱い等について】
 2019年6月11日より新『小さなうつわのメッセージ』HPが開設されています。2019年6月以降の最新号(『折々の記』第58号以降)の閲覧は新『小さなうつわのメッセージ』にてご閲覧願います。
 それにともない当サイトは旧『小さなうつわのメッセージ』HPとして過去の更新などの閲覧として利用できます。
 これからも『小さなうつわのメッセージ』をよろしくお願いいたします。

≫ 新『小さなうつわのメッセージHP(館林版)』(https://tiny-pot.com/)(別窓で開きます)



【検索サイト(Yahoo!やGoogle等)を利用した際の、検索結果について】
 当サイト名等を検索した際に、その検索結果に当サイトの他に、まったく当サイトと関係ない広告目的(営利目的)のサイトが表示されることがあります。中には悪質な誘導サイトが含まれる場合があります。当サイトの検索ランクが高いためですが、それらの無関係なサイトは、当サイトとは一切関係ありませんのでご注意ください。また、そのような無関係のサイトを閲覧した場合は一切関知しませんのであらかじめご了承願います。(2011/04/16)
【ページのスタイル(デザイン)の自動変更について】
 2006/10/10からページのスタイル(デザイン)が自動的に切り替わる事があります。これはその時点でのサイト・スタイルに最適化されて作成されているためです。
 表示の異常等ではありませんのでご安心ください。
【表示について】
 このサイトはFirefoxでの表示に最適化されています。IEですと表示が乱れる場合がありますのであらかじめご了承ください。
 閲覧の推奨は、五十鈴さんの環境(フルHD1920x1080)を基準にしております。(2013/04)
【原版表示廃止のお知らせ】
 これまで当サイトではWeb版とあわせて原版も表示させていましたが、原作者の五十鈴さんと協議の結果、2006年9月25付更新分(No63)からWeb版のみの表示になりました。
 Web版の制作は、五十鈴さんがDTPで執筆して印字したもの(A4版の原版)を元に、なるべく原版と同じようになるように再現しております。そのため、通常のWebページの書式とは違ったレイアウト構成になっております。画面サイズによっては表示の乱れる場合がある点をあらかじめご了承ください。
 「五十鈴さんのオリジナルの原版が欲しい!」という方は、下記のお問い合わせメールアドレスにてお知らせください。(若干の印刷料や送料を負担していただくことになると思いますのであらかじめご了承ください)

mailto:tiny-pot@fruits.jp

お問い合わせ等はメールにてこちらまで。

 このサイトの内容のすべて又は一部の無断掲載や無断引用や無断印刷や無断配布を禁止します。また内容の編集・追記・改ざん・改変・一部削除等をしたものの引用や掲載や印刷等も禁止します。
 また、このサイトの内容のすべて又は一部の掲載や参照や引用の許可は、内容の性質上、各頁の枠単位ごとにすべて別々に許可申請が必要となりますので、予めご了承願います。
 各ページの著作権は、それぞれの原作者に帰属します。
【注意】 このサイトのリンクの登録は必ずhttps://awa.rgr.jp/wiki.cgiでお願いいたします。
(各頁への直リンクは構いませんが、更新の都合で予告なく各頁のURLが変更されます)

https://awa.rgr.jp/wiki.cgi リンクを登録するときは、
こちらのバナーをお使いください。

Produce by FULTAIP.


0128121

+10,000,000 OVER(2021)