作品集 『ライラックの垣根の家の物語』

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 娘はこの質問さわぎのうちにすっかりスパークス夫妻になれて、紙に「朝、黙ってライラックの花をとりました。ごめんなさい。」と書いて近くにいた夫人に見せました。ところが、夫人は目を通すと良くわからないというジェスチャーをして、スパークスさんに紙を渡しました。スパークスさんもちょっと首を曲げて、ただ微笑んで読んでいるだけで、なんだか分からないというようでした。私はスパークス夫妻の娘への思いやりと思ってしまいました。私達は、ケーキをお渡ししてライラックのお礼の握手をして帰りました。外の太陽の光にライラックの花の色は鮮やかに輝いて見えました。


 その夜、一日の出来事を思い出しているうちに私の錯覚に気がついたのです。スパークス夫妻は、朝、娘がライラックの花を断わりなくとっているところは見ていなかったということです。
 娘が花をとったのはスパークス家の表の道に面した垣根の外のライラックです。表の窓は、板で隙間なく塞いであります。あの時、外に人影はありませんでした。スパークス夫妻が外に出て見ていたとは思えません。私達の会話は聞こえていません。
 それなのにまちかまえるようにして、裏のバックヤードでライラックの花束を下さった。スパークス夫妻は、ただライラックを分けてあげようとそう思ってのことなのでしょうが、娘の心を癒すことと、娘の心を知るようにと私に気付かせた見事な演出は、どなたなのでしょうか。
『罪を溶かす愛』というメッセージをタイトルのように伝えて・・・。 わからないままに一日のつかれを夜の抱擁の中にすべて托しました。






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